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エンジニアから広報へ?元“キャリア迷子”が語る「社内のブルーオーシャン」の見つけ方

せっかく働くなら、おもしろい仕事をしたい。でも会社員として働いている以上は、そこにある仕事の中から自分ができることをやるしかない。そう思っている方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、「これまで会社にない仕事」を作った人のお話です。一見、順風満帆にキャリアを積んできたのかと思いきや、実は20代は自身をキャリア迷子と感じたり、周りの優秀さに勝てないと悩んだりしたこともあったのだとか……。これからの企業人として、会社の中で自分らしさを活かして働くにはどうしたらよいか、コニカミノルタの画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」の技術広報をしている西上直孝さんにお話を伺います。

西上直孝さん

西上直孝さん

2013年、技術職としてコニカミノルタに新卒入社。機械設計、ソフトウェア開発、新規ソリューション開発リーダーなど“キャリア迷子”の時代も経て、自身の会社における生存戦略を考え、当時なかった「技術広報」というポジションをつくる。現在は画像IoTプラットフォーム「FORXAI」の技術広報に従事。イベントの企画や出展、技術ブログなど「技術の発信」に関わることに幅広く対応中。趣味は新居のDIYと、子どもと遊ぶこと。

“キャリア迷子”だからこそ見つけられた「技術広報」という仕事

──エンジニアとして入社しながら、事業開発の枠を超えて、社内に「ない仕事」を作ったというのは本当でしょうか。

ない仕事を作ったというのは言い過ぎかもしれませんが(笑)、そうですね。社内というよりは、自分たちの事業部や部門の中にはない「技術を広く知ってもらう」という役割を必要だと思うタイミングが当時の上司とも一致したのが大きいです。当時初めての技術広報として、これまでにはなかった仕事をすることになりました。

もともとは技術職で入社したので、実は広報とは全く関係のない仕事でした。今はお客様(エンドユーザー)とパートナー、コニカミノルタが一体としてつながる、IoT/AI技術を中心とした画像IoTプラットフォーム「FORXAI」の技術広報をしています。

勝てないことで勝負するより、社内のブルーオーシャンを探す

──ではもう少し詳しく、入社してから今までのキャリアと、技術広報の道に進むことになったきっかけについて教えてください。

10年くらい前にスマートフォン、その次にプロジェクションマッピング、ウェアラブルディスプレイ、クラウドなど、その時その時で新しい技術を担当することが多くて。思えば、会社の中で新しい技術を取り込む場所を望んでいたと気づきました。

特にスマートフォンのレンズの機械設計をしていたときに、特に機械系のエンジニアはベテランの方ばかりで、正直「あぁ、上が詰まっているな」と思ったんです(笑)。10年、20年同じ仕事をしてもずっと下っ端かなと想像したら、何とも言えないですよね。そうしたら、新しいことを始めるしかない。

いま、AI/IoT系の人材はキャリア採用の方が多いんです。新しい技術に取り組んでいくと、社外から経験者を採用してくるので、そこもまた勝てない。社内の技術者にも勝てない、新しい技術に取り組んでも社外から来る人に勝てない、他に目指す道はなんだろうと考えたときに、「自分は(この会社の)技術はある程度知っている」ということに気づいて。それを企画に落とし込んだり、外の人に伝える仕事はまだこの会社の中にはなかった。だから、そこに入り込もうと思いました。

自分は「異端」と言いつつも常に柔らかい物腰を崩さない西上さん

「個」が強い、大企業らしからぬサバイバル環境でマインドが変わった

──難しいと言われても周囲を巻き込んで変えていく行動力、アグレッシブですね。

いやぁ、こんなにアグレッシブになったのは3、4年前くらいなんですけどね。4、5年前にクラウド系の開発をしていた部署は8割以上がキャリア採用の方で、チームというよりは個人が成果をあげていくようなところだったんです。当時私はチームの一番下っ端だったので、上からの指示を受けて成果を出していくスタイルだったのですが、個の力が強い部署では「受け身になっていると、仕事がまわらない」ということに気づきました。他の人はどんどん成果を見せていくので、その中で埋もれてしまうな、このままではいけないなと。その道のプロの中で生き抜いていくためには、アウトプットを自分で考えて出していかないといけないと気づいて、そこからマインドが変わりました。たまたまサバイバル環境に身を置いたことが、結果糧になったという感じです。

複合機やプリンターのような大きな既存製品をつくる場合だと、やはりチーム一丸となって取り組む形になるのですが、AI/IoTといった新しい分野になると、現場のエンジニアの存在がより大きくなってきます。チームという体は成しているのですが、個々人で勉強している方が本当に多いです。それぞれが各自のスキルをもって個の力で頑張れる環境ですし、AI/IoTの部署はスペックが高い人が多いので、今思えばエンジニアの道を進み続けなくてよかったと思います(笑)

西上さんが率いるチームのメンバーとのディスカッション

“エンジニアの味方になれる広報”が、衝突する企画と開発の手をつなぐ

──西上さんが担当する“技術広報”とは、具体的にはどんなお仕事なんでしょうか。

一言でいうと、FORXAIに関わること全部ですね(笑)。技術広報、といっても技術力やビジョン・方向性を単に発信するだけでなく、マーケティングやプロモーションの領域に近いです。たとえば、技術ブログをはじめとしたWebサイトの運営と解析を通じて、採用やビジネスチャンスにつなげることや、あとは技術系の展示会への出展ですね。これまでは学会など、技術寄りのものが多かったのですが、最近ではビジネス拡大のための大きな展示会への出展検討も進めています。
他には、社内でもまだFORXAIを知らない、触れないという人も多いので、そういった方が気軽に触れるためのイベントを行って、広がりを持たせるようにしています。社内、社外、ビジネス、採用など全方向からFORXAIを、知ってもらう活動ですね。

──広報経験のない中で技術広報をスタートされたわけですが、何か西上さん流の工夫はありましたか?

以前エンジニアだった頃、企画側と開発側がよく衝突していたんです。例えば企画側が、利用者がアプリを使う時のことを考える、いわゆるサービス設計をしているときに、エンジニアであれば気づくような「その機能を入れるにはすごく時間がかかる」「その操作は、もともと予定していた機能の中では実現できない」といった矛盾を、技術を知らないとできることとして話をすすめてしまったりするんですよね。

当然、要求があってシステム開発をするんですけど、作ったものをどう運用するか、アプリのサポートデスクや機能改善を回していくことを考える中で、開発側が考えることと企画側が考えていることが一致せずに言い争いになることもあり、当時はなんだかなぁと思っていました。

技術広報として企画側の立場になった今は、企画・マーケ目線が訴求したい点は最大限PRしつつも、開発側の技術的な仕様や制約など押さえるところはしっかり押さえて、無理なくお客様のニーズに応えられる伝え方をしていこう、という目線で進めるようにしています。

──企画側と開発側、お互いの言いたいことを翻訳する役割が必要なんですね。

そうですね。そういったことを伝えるのがとても上手な先輩の下で働いていたので、なるほどなと気付かされました。

「開発する」というと、サービスをリリースするところまでは考えると思うのですが、その後の運用やアップデート、場合によってはサービス終了など、アフターサポートまでがないといけない。信頼を得続ける、お金を払ってもらい続けるというところは今後のビジネスモデルとして必要な要素です。スマホを持っていると、そういうサービスを自分も色々使いますよね。

もちろん、既存事業でもアフターフォローはあるのですが、「モノ売りからコト売りへ」という視点がこの会社にはまだまだ足りないな、と当時感じていたのを覚えています。そこをつなげられるのは、自社の技術を知っていて、ある程度開発やお金の流れをわかっている人だけです。その部分に自分がうまくハマったんだとと思います。

──西上さんのように技術を知っている人が企画側に入ることで、企画側の意識が変わったことはありますか?

マーケティング担当など、技術についてそれほど詳しくない方も「やはり技術を知らないといけないよね」という感覚が芽生えている気がします。そもそもケンカしたい人はいないと思うので(笑)、そういった衝突は前よりだいぶ少なくなりました。最初は苦労しましたが、“エンジニアの味方になれる広報”という意味で、逆にエンジニアの賛同は得やすかったのかもしれません。

西上さんが関わったコニカミノルタの展示会の様子

「広報は人たらしになれ」。目指したのは、スーパーで試食を配る人!?

──西上さんは、巻き込み上手なんですね。

技術広報を始めたとき、当時の上司に言われたのが「広報は人たらしになれ」。協力しますよ、味方ですよ、という雰囲気を出していたら、それに対して応えてくれる人も多くなります。頼り頼られる関係になることが大事、と言われていました。思えば学生の頃も接客業のバイトをしていたこともあり、もともと自分の中では人と接することが合っていたのかもしれません。

私は「人たらし=スーパーで試食を配る人」のように考えていて。美味しいものをもらったときに、何か返してあげなきゃという気持ちにさせてくれる(笑)。そこで何かを買うわけじゃなくても、繰り返していくことでお互いのこともよく知れるし、いい関係性になれると思います。

これからの企業人は、自分の専門領域+αを知ることが必要

──西上さんは、これからの企業人に求められるものとは何だと思いますか。

私が今の立場になって気づきを得たところもあるのですが、エンジニアもビジネスモデルを考えなければいけないし、企画側も最新の技術情報を知っておかないといけない時代になってきたのではないかと思います。情報の変化が激しい社会ですし、ニーズの変化も大きいので、これまでコニカミノルタがしてきた「モノ売り」から、「コト売り」が当たり前の時代になってきました。“買ってもらったらおしまい”という考え方では、一回きりで飽きられてしまう。そういうマインドでモノを作らなければいけないし、企画も考えないといけないですよね。

同様に、技術者であれば「リリースまで頑張ろう」、企画者も「一回売れば終わり」という考え方でもなくなってきています。それぞれの道のプロの考え方を持ちつつ、そのまわりまで知っていく必要が出てきていると思います。

──最後に、技術広報をやる上での今後の目標を教えてください。

自分たちがもっと「今のコニカミノルタ」「未来のコニカミノルタ」を見せていかないといけない。たとえば、Wikipediaの一番最初に“AI/IoTのコニカミノルタ”と出てくるようになって「コニカミノルタって変わったね」「将来ありそうな会社だよね」と思ってもらいたいなと思います。

─インタビューを終えて─
今では西上さんをリーダーとして、メンバー4名の体制まで拡大したという技術広報チーム。西上さんいわく、「やりたいことを叶えるには、自分の分身がもっと欲しい」そうです。記事を読んでご興味がわいた方は、西上さんはじめコニカミノルタのメンバーが執筆を手がけるFORXAIの技術ブログもぜひご覧ください。

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