「迷ったら変わる方を選ぶ」 機能材料技術における世界トップクラスのシェアの秘訣とは?

コニカミノルタの機能材料部門が、ディスプレイ向けフィルムで世界トップクラスのシェアを誇ることをご存知でしょうか?この機能材料領域は、日本の産業力を背負う存在としても注目されています。 コニカミノルタ神戸サイトでは、生産現場の安全と生産効率を追求しながら、時代のニーズに応える製品を生み出し続けています。そんな最前線に立つのが、大久保さん。多忙な日々の中で、どのように信念を持ってキャリアを積み、現場の変革を進めてきたのか、その秘訣に迫ります。


コニカミノルタ株式会社
執行役員 機能材料事業部長 大久保 賢一さん

千葉県出身。1998年にコニカ株式会社(現コニカミノルタ株式会社)入社。
12年間インクジェットの材料開発に携わる。公募制度で経営戦略部に異動後、経営企画部グループリーダーへ。2021年機能材料副事業部長 兼 営業統括部長として神戸サイトに異動。2022年より執行役員 機能材料事業部長に就任。
バンド演奏が趣味で東京にあるコニカミノルタ軽音班に所属している。

世界トップクラスのシェア、日本の産業を支えるコニカミノルタの機能材料技術

 

──コニカミノルタは、ディスプレイのフィルムサプライヤーとして、業界を牽引しているとお聞きしました。 機能材料事業とはどのような事業なのでしょうか?

 

機能材料というといろんな材料がイメージされるかもしれませんが、今我々が 主に提供しているのはディスプレイ向けのフィルムですね。テレビを違う角度から見てもきちんと画面が見えるようにするために、独自のフィルムの性能が活かされています。このコニカミノルタの位相差フィルム(VAタイプ)は、世界トップクラスのシェアです。

 

業界で見ると、実は競合が少なくて、しかもほぼ日本のメーカーです。そのため、「日本が国として技術を守る領域である」と注目されています。ものづくりにおいて、一般的に最終製品の製造は中国が強く、モノやサービスのトータルデザインはアメリカが強いと言われています。でも、ものづくりを実現していくためには、サプライチェーンの上流の技術がないと成り立たないですよね。その上流の中でも、今は特に材料分野に日本の強みがあります。

 

▲⼤型の位相差フィルム⽤のSANUQI(サヌキ)は、以前の営業部長の出身地が由来というユニークなネーミング。

工場運営は他では真似できないノウハウの塊

 

──この強さの秘訣はどこにあるのでしょうか?

 

「料理のレシピのように作り方はわかっても味が再現できると限らない」というのと一緒で、作り方がわかっても、性能が再現できるかは、なかなかボタン1つではいかないところがあります。我々の工場は、オーダーメイドなんですね。競合のメーカーも作るものは似ていても、工場の中は全部同じではありません。 その中で、コニカミノルタの工場の特長はスピーディーで生産性が高いこと、そして、色々な機能を付与することができ、使える材料の幅が広いということ。これは他社にない特長です。

 

──マルチに材料を扱うとなると、コストもかかり、課題も多くありそうですね。

 

そうなんです。コストや品質の課題をクリアするのは正直かなり苦労しました。ただ、お客様に対して新しい価値を提供していくには、色々なものに価値を載せて、時代とともに我々も変わりながらマルチに材料を使えるべきだなという結論に至りました。

 

──なるほど、そのためどのような工夫をされていらっしゃいますか?

 

DXを導入することによって工場の生産性を高めています。単に材料の技術だけではなくて、工場運営の工夫が我々のビジネスの強みに直結します。また、工場とは生命線です。工場が止まるとその時間はものが全く生産できない。実は、我々の事業はコニカミノルタで唯一、24時間365日工場を稼働(※1)させています。そうすると、どうしても材料やメカのトラブルが発生するのでこうした現場での異常検知や予知などに、DXをかなり活用しています。

 

優先順位は1番がとにかく安全で、2番が環境への配慮、3番目がようやくビジネスです。安全第一が我々の信条です。

 

工場運営は、ノウハウの塊です。続々と変化する世の中の需要に応えて、安定してものを出していかなくてはいけません。次の展望としてはそういう工場のノウハウを活かす別の分野の領域を探したいなと思っています。

▲神戸には神戸サイト、神戸第2サイト、西神サイト3つの拠点がある。

仕事において大切にしていることは「迷ったら変わる方を選ぶこと」

 

──ところで、大久保さんはどのようなご経歴で現在のポジションに至ったのでしょうか?

 

入社当時は、大型インクジェットプリンターのインクの開発をしていました。12年間、開発をしている中で、世の中の課題に直接役立つことに携わりたいという思いもありました。そこで、当時、経営戦略部の新規事業の公募制度をみて、ギリギリまで応募するか迷いましたが、最終的に迷ったら変わる方を選ぶことにしようという覚悟を決め、結果、公募対象者に選抜されました。そこが大きな転機の一つです。

 

「迷ったら変わる方を選ぶ」という経験は、プラスになるとずっと実感しています。それは単純にキャリアだけの話だけでなく、仕事を進める上で迷うということは新しいことに挑戦するタイミングだと考え、決断のポイントにしています。

 

──大久保さんは開発や企画戦略、営業と様々なご経験をされていらっしゃいますね。神戸での生活も今年で4年目を迎えられたということですが、どのような日々を送られていますか?

 

実は、神戸ライフが満喫できればいいのですが、ほとんど飛び回っていますね。イメージとしては、神戸が3分の1、東京3分の1、出張が3分の1です。

東京では、お客様にお会いする仕事があることに加えて、プライベートではコニカミノルタ東京サイト八王子の軽音班に所属していて、ドラム演奏をしています。東京の社内イベントで演奏したときは、「神戸の事業部長が何でこんなところにいるんですか!?」と、社員にびっくりされたこともありました(笑)。

出張は海外が多いですね。お客様との対面でのコミュニケーションを大切にしているのでなるべく現地に向かうようにしています。直接ビジネスについて話すなら、Face to Faceがベストです。表情を交えての説明や、気持ちを伝えるということがものすごく大事で、これらはリモートでは難しいのです。

 

▲軽音班での活動で東京に行くことも。ドラム暦は20年以上。

「お客様にとって役に立つか」というスタンスを忘れない

 

──これから、一緒に働く方へ向けてメッセージをお願いします。

 

ごく当たり前の話ですが、自分で新しいことを学ぶとかスキルを身につけることは手段でしかなく、他の誰かの役に立って対価をいただくという姿勢が大切なことだと思っています。 日々、事業の厳しい局面に立たされると、数字を達成することが目的みたいになってしまいますが、そうではなく、お客様の役に立って、それが結果的に数字になる、その軸をぶれさせてはいけないなと強く思います。そして、これからお客様に新しい価値を提供するために、臆せず自分の強みを発揮してほしいですね。

 

 

 

(※1)24時間365日工場を稼働

従業員の健康面・安全面とワークライフバランス・モチベーションの観点から、年2回の長期連休(7日以上)を含め従業員個々の年間休日はきちんと確保しています。

 

─インタビューを終えて─
コニカミノルタ神戸サイトを訪れると、至るところに「安全確認」の文字が目に入りました。大久保さんのインタビューにもあったように、ここでは工場運営の根幹に「安全」があることを感じました。コニカミノルタの機能材料事業は、日本の産業を支える存在であり、「技術をどう守るか」というテーマは、国という規模で考える必要もあることから、そのスケールの大きさに圧倒されました。インタビュアーである私も仕事では、数字の目標や自分の成長に気を取られがちです。しかし、「他の誰かの役に立つ」という視点を大切にすることは、開発でも営業でも企画でも共通の意識として必要なのだと感じます。こうした考え方は、働き方を見直す良いヒントになるかもしれません。

Edit&Text:Sayoko Kawai,Photo:Aya Tonosaki,Design:Naomi kosaka

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