開発センター長に聞く、開発者一人ひとりの個性を活かす組織づくり

一人ひとりの個性を尊重する「多様性」の時代。それぞれの個性を発揮できることを目指す考え方は浸透しつつあります。このような考え方をどのように現場で実践しているのでしょうか?
開発の現場での成長の鍵を、コニカミノルタ瑞穂サイトで働く大貫製品開発センター長に伺ってみました。


コニカミノルタ株式会社
デジタルワークプレイス事業本部 開発統括部
製品開発センター長 大貫哲也 さん

愛知県犬山市生まれ、1993年コニカミノルタ入社。当時はまだ珍しかったカラータンデム複合機の開発にゼロから携わる。2023年デジタルワークプレイス事業本部 開発統括部 製品開発センター長へ。
趣味はテニス、ゴルフ。

なにもないところから始まったカラータンデム複合機開発、ゼロイチの経験が今の財産

 

──まずは、コニカミノルタのデジタルワークプレイス事業について教えてください。

 

デジタルワークプレイス事業は、ひとことで言うとオフィスでの働き方改革を推進し、顧客のアウトプットを最大化する事業です。複合機などのハードウェア製品、さらにサービスを活用してお客様の業務改善に貢献することを目指しています。

 

この瑞穂サイトでは、ハードウェアの開発と設計をお客様の利便性や環境性能などの機能をいかに高めていくかを追求しています。今はペーパーレスと言われる時代ですが、ハードウェアの基本的な機能も向上し続けないとお客様は離れてしまいますからね。

 

──大貫さんは現在製品開発センター長というポジションですが、ずっとハードウェア開発をされていたのでしょうか?

 

そうですね。ただ今でこそ、開発と設計は一緒に行なっていますが、入社当時は開発、設計、生産は別の部署に分かれていまして、入社2年目でカラー機の開発部署に配属されました。当時は、まだモノクロ機が主流だったのでカラー機は社内でも有識者が少なく、設計のチームに提案してもこんなのでは量産できないと突き返されていたこともありましたね。

 

それから、今では主流となっているタンデム方式(※1)のカラー機の開発が始まり、そこに参画しました。そこでは何もない白紙の状態から、ローラーの大きさ、ユニットの配置をどうするかなど、ゼロイチの状態から開発をしました。この経験は自分の中で財産ですね。

 

 

▲大貫さんが若手時代に開発した転写ユニットは最新機種にも搭載されている。

社員の自己実現と未来を描く力が、組織を束ねる鍵となる

──コニカミノルタの複合機の開発は、歴史のあるものですね。開発の現場で、大切にしていることはどんなことでしょうか?

「自己実現」を意識して欲しいという話を部下にしています。自分が何を成し遂げたいかということを考えながら、行動と提案をしてほしいなと。そのために、私としては、既存の開発をしながら、新しい取り組みが生まれる場や機会を作っていきたいと思っています。

当社の中期経営計画は3年のスパンで設定されているのですが、来年がちょうどそのタイミングです。私たちのセンターでは経営計画の助走にあたるフェーズで「小集団活動」という、若手からベテランまで4~5名の小集団グループをいくつか作り、ちょうど今「将来のオフィスはどうなっているか」という広い視野で、課題形成から検討をする活動をはじめています。

この活動を通して「次世代の複合機」に必要な技術を企画することだけではなく、課題の本質をとらえ、抽象と具体の思考プロセスを繰り返す中で、自身で考え行動できる人財を増やしたいなと思っています。

▲愛知県豊川市にあるコニカミノルタ瑞穂サイト。

得意なところを強くする、リーダーとして場を作っていきたい

 

──課題を自分ごとにするということですね。大貫さん自身の課題や挑戦はどんなことでしょうか?

 

チーム全体のゴールに向けた戦略をつくることです。お客様の要望をなんとか叶えたいという気持ちがあり、その結果、個別のソリューションが増え、機能や開発の重複が生じてしまいました。そのため、「コニカミノルタのソリューション」の顔となる様な強いアプリケーションが作れていないところもありました。

 

そこを強化するために、目標をしっかり定めることで、そこに向けてみんなが技術を作り込んでくれる体制を作りたいですね。 さらに画質性能などの基本機能をさらにもう一段階高めていきたいです。そのためには全体がタッグを組んで底上げしないと良くはならないと感じています。

 

──チームワークの必要性を感じますね。自己実現とチームワークの両立のために取り組んでいることはありますか?

 

タレントダイナミクス(※2)って聞いたことありますか?個人と組織の信頼を高め、チームの生産性を高めるメソッドなのですが、このツールを使うことで、人財の才能(強みと弱み)を可視化することができます。それを製品開発センターメンバー全員が受けていて、センター内で公開しています。この実施には、カウンセラーの資格をもっている社員がいてワークショップなどを通して有効活用しています。ちなみに私はクリエイターです。新しいアイデアを考えるのは得意ですが、発散し続けて終われないタイプです(笑)。

 

得意なところと、苦手なところを明示してくれているので、個々の得意な役割を把握した上で成果が出るように働きかけることもできます。そのおかげもあって議論は活発化していると思います。

 

▲オフィスのデスクの配置も、従業員同士のコミュニケーションがしやすいような工夫が施されている。

技術力の向上が収益改善へ、グローバル企業としてたどり着いた答え

 

──開発側からのアイデアで実装された機能があると伺いましたが、どういった経緯なのでしょう?

 

日本のユーザーの多くは中小企業です。そこでは、複合機を用いてオフィス文書だけでなく、社名入りの封筒をきれいに印刷したいなど細かな要望があります。一方でアメリカだと、日本のような都市集約型の街ではないので、サービスマンが訪問しメンテナンスするということに時間もコストもかかります。つまり、壊れにくい商品や自分でメンテナンスができる商品が喜ばれるということです。

 

こうした様々な要望を解決できるアイデアとしてメディアセンサーという機能を開発しました。どんな紙を使ってるか、お客様が考えなくても機械が自動判別してくれます。最適設定で印刷してくれるようになり、そのセンサーをつけたことで紙詰まりが減り故障が少なくなりました。この企画は、開発側からのアイデアで実装されたものです。

▲一つの複合機の中には3000個以上の部品があり、その一つひとつに開発ストーリーがある。

業界に囚われず、技術者として「なんでもできる」環境が魅力

 

──リモートワークが普及し、オフィスのあり方もかわっていますがその中でデジタルワークプレイス事業で働く魅力とは何でしょうか?

 

製品開発センターの価値ってなんだろうと考えると、上流から下流までその気になればなんでもできることです。これは組織内の誰に聞いても、私達ってなんでもできるよねと返答がある。

 

自由に発想できるので、 だからこそ、やらなければいけないことは無限にあります。その中で1つでもやりたいことに繋がれば、そこから自分の世界って広がっていくのではないかと思っています。 油断すると部署の垣根ができてしまうから、そこを解きほぐしていきながら、組織を活性化していくことが製品開発センター長である私の役目。そして、社員が輝ける場を作っていくことにトライし続けていきたいですね。

 

 

(※1)タンデム方式

CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の印刷工程を一列に連続して配置し、一回の用紙への印刷工程でカラー印刷を完遂する方式のこと。この方式は、高速印刷・小型化に適しているため、オフィス用途として広く普及している。

(※2)タレントダイナミクス(才能経営®)

社員一人一人の得意分野と苦手分野を、才能診断ツールを使用してプロファイルし、個人の特性を組織やチーム内で最大限に活かすためのメソッド

 

─インタビューを終えて─
個人を活かす組織を具体的に実践するために、部下の方々と細かくコミュニケーションをとっていらっしゃる様子で、私たちも終始和やかな雰囲気でインタビューをさせていただきました。 インタビューを終えて、プリンターや複合機は技術の集合体でそれはアウトプットの一つの例にすぎず、技術力向上をつきつめていく姿がとても印象的でした。

Edit&Text:Sayoko Kawai,Photo:Aya Tonosaki,Design:Naomi kosaka

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