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学び続けるための学び。技術の価値を知る新入社員向け「シススク研修」

多くの企業で、入社後すぐに新入社員が受講するのが研修です。人によっては研修という言葉の響きに「眠そう……」なんてイメージを抱くかもしれません。しかし実際に受けてみると、印象がガラリと変わる研修もあります。コニカミノルタの技術系新入社員向けの「シススク研修」もその一つかもしれません。社員考案の独自カリキュラムで、メーカーらしいユニークな内容が毎年好評。今回は、研修で講師を務めている則武和輝さんと橘和佳さんに、研修の内容や狙い、ユニークさを伺いました。

 

則武和輝(のりたけ かずき)さん

2019年コニカミノルタ入社。デジタルワークプレイス事業本部DW-DX事業統括部国内ICW推進部所属。クラウド型学習支援サービス「tomoLinks(トモリンクス)」の開発に携わる。入社2年目でアシスタントとしてシススク研修のWebアプリ開発講座を担当。3年目に講師に。趣味はテニスと釣り。社内のテニス班に所属。

 

橘和佳(たちばな のどか)さん

2021年コニカミノルタ入社。技術開発本部データサイエンスセンターデータソリューション部に所属。他事業部と連携しながら、社内のデータ分析を行っている。入社2年目にシススク研修の講師として、Python講座を担当。社内のテニス班に所属。

社内講師が独自カリキュラムで研修を開催

──コニカミノルタの研修の一つに「シススク研修」があると伺いました。どんな研修ですか?

則武:「シススク」はシステムスクールの略で、新入社員向けのシステム分野の研修です。全体研修後に実施され、おもに技術職の社員を中心に希望者が参加します。ちなみに技術系の研修としては、シススクのほかにメカスク(メカニックスクール)もあります。

シススク研修ではWebアプリ研修の講師を務める則武和輝さん

──具体的な内容を教えてください。

則武:毎年少しずつ内容は変わるのですが、例えば2023年度はデジタル基礎、クラウド実践、 IoT 実践の 3 コースがあり、受講者が業務内容に応じてコースを選択できるようになっています。全コースを受講すると、期間は約1カ月。講座はC++やPythonをはじめとしたプログラム言語やVue.jsやNuxt.jsのようなJavaScriptフレームワーク 、HTMLやCSS、各種センサーなどの組み込み系まで幅広い内容です。

それからシススク研修の大きな特徴が、社員が講師であることです。受講生の一部が2 年目以降に運営メンバーとして参画するのですが、これは教えることで学びをさらに深め、定着させる狙いもあります。研修のテーマはある程度会社の方針もありますが、具体的なカリキュラムの策定や運営は講師に一任されています。技術の進化や時代のニーズに合わせて、毎年内容をブラッシュアップしていますね。

楽しくもあり、辛くもあるシススク研修

──橘さん、新入社員としてシススク研修を受講した感想はいかがでしたか。

橘:感想は「楽しくもあり、辛くもあり」という感じです。扱う技術の幅が広いので興味が湧く内容も多く、演習もあって楽しい反面、苦手な分野や初めての分野に取り組むのはちょっと大変。Pythonのような自分の得意分野は楽しいのですが、Webアプリや組み込み系はついていくのに必死でしたね。

入社2年目からシススク研修のPython講座の講師をしている橘和佳さん

──橘さんが受講時は、則武さんがWebアプリ開発講座の講師だったそうですね。

橘:そうなんです。Webアプリ開発を含め、基本的にシススク研修はまったくその技術を知らない人でも受講できる内容になっていますが、やはり後半になるにつれて難しくなります。演習をこなすのもなかなか大変でした。ただ、同期と教えあったことで、理解を深めつつ交流も深められたのはよかったですね。

則武:僕自身、学生時代の専攻は電気系でWebはもともと門外漢。知らない分野を学ぶハードルはよくわかっているので、初学者にやさしい講義を心がけています。

──やさしく感じてもらうための工夫はありますか?

則武:よく「車輪の再発明」はしないという言い方をしますが、既製の技術はどんどん使います。講座の中でもシンプルにコードの書き方を教えて「こういうおまじないがあります」なんて説明するだけのことも(笑)。
本人が作り込んだログイン画面と、あるものを使ってササッとつくったログイン画面と、エンドユーザーにとって違いはほとんどありません。それなら、その部分はあるものでササッとつくって、別の改善に力を入れていったほうがいい。大学の研究では既知の部分含めて自分でとことん調べることも多いので、そこは結構違うかもしれませんね。もちろん分野にもよると思いますが。

──シススク研修の目的は、幅広く基本技術を習得することでしょうか?

則武:それもありますが、それだけではありません。研修の大きな目的は「技術の価値や意義」を学ぶこと。単なる技術習得にとどまらず、「デジタル技術とは何か?」「どのような価値活用方法があるのか?」まで理解できるようになることを目指しています。

それ以外にも、新入社員同士や講師陣との技術交流を通して、縦と横の人脈を広げること。そして「学び続けられる」ために学ぶという目的もあります。これから先、守備範囲外のことも学んでいけるマインドや姿勢を身に付けてほしいと考えています。

実際のシススク研修の様子

初学者を置きざりにしない、中上級者も飽きさせない

──橘さんは2年目でPython の講師に抜擢されたのですよね。講師になって苦労したのはどんな部分でしたか?

橘:Python講座を新しくゼロから創り上げたことですね。シススク研修は初学者からそれなりに知識がある人まで受講者のレベル感に幅があるので、できるだけ多くの人に合う内容を考えるのが大変でした。初学者は絶対に置いていけない一方、ある程度知識がある人も退屈させたくないので、応用問題もいろいろ用意しました。
通常業務もある中、コードを書いたり、演習問題をつくったり、授業の流れを考えたり……とやることが多く大変でしたが、先輩たちにも助けてもらい、やり遂げられました。

則武:講師をしていると、ついいろいろ教えたくなりますが、一気に詰め込みすぎると何が何だかわからなくなってしまうことも。どちらかというと、実際に業務でどう使えるかなど、現場の生の声を届けることを意識しています。

橘:学生時代から情報工学を学んでいますが、Webスクレイピング(Webサイトから特定の情報を自動抽出する技術)など、シススク研修で初めて知った実用的な技術もありました。

「この人に聞けばいい」がわかる人脈形成

──研修の雰囲気を教えてください。

橘:講師は5年目くらいまでの先輩が多く、年次が近いのでフレンドリーな雰囲気。わからないことも聞きやすく、オンライン研修でも質問しやすかったです。
同期とのつながりも深まりました。やはり一緒に研修を受けていると、誰がどの分野が得意かわかるんですよ。研修の中にはチームで取り組む課題もあるので、チームで無双している人がいれば「すごい」と話題になるし、他チームから「あの人がいるのズルい」なんていわれたりもします(笑)。

則武:僕の場合は、コロナ前で研修はオフラインだったので、できる同期をつかまえて、一緒に勉強して乗り越えました。

橘:シススク研修がなければ、他部署の同期がどんな技術に長けているかを知ることもなかったと思いますね。困ったときに誰に聞けばいいかわかるようになったので、その後の仕事も進めやすくなりました。

和気藹々とした雰囲気。

「あの技術が使えるかも!」とあたりがつけられると強い

──目的の一つに「学び続けられるために学ぶ」を挙げていました。これを実感することはありますか?

橘:実は私、シススク研修のあと、自分でも何かつくりたいと思って、個人的にWebアプリの研修を受けにいきました。今も独学で勉強しながらWebアプリをつくっているんです。

則武:本当!? それはうれしいなあ。専門外の分野でも最初の一歩さえ踏み出せたら、やる気のある人は自走していけるんですよね。まずは知ること、学びのきっかけを得ることが大事。シススク研修は一つの技術を深く極めるというよりは、幅広くいろいろな技術の基礎を習得することを目指しています。そうすることで、何かやりたいことがあるとき、どんな技術や手段が使えそうか「あたり」をつけやすくなります。

橘さんが独学でWebアプリを学んでいることを知り、何度も「うれしい」と喜ぶ則武さん。

橘:自走しようという意識は特になかったのですが、研修では楽しそうな技術をたくさん学ぶ中で「こんなことができるんだ」という気づきも多くて。そのうち「あの技術でこれもつくれそう」なんて考えられるようになっていました。

則武:それはありますね。僕も以前、寮の浴場の混雑具合を可視化するツールをつくりたいなと思ったとき、シススク研修で使ったセンサーでドアの開閉回数を測れば実現できそうだな、と見当がつきました。

橘:技術者はものづくりが好きな人が多いので、「こんなものをつくってみたい」という発想自体は、みんな結構持っている気がしますね。

何かに作用させることで「技術の価値」が生まれる

──研修の大きな目的は「技術の価値を学ぶ」ことだそうですが、そもそも「技術の価値」とは何でしょう?

則武:これは僕の個人的な意見ですが、技術単体にはそこまで価値がないと思っているんです。大事なのは、技術を使って何か価値を生み出すこと。物理学では「仕事=力×距離」の式で表されます。つまり物体にいくら力を加えていても、それが摩擦抵抗などで動かなければ仕事をしたことにはならない。技術を使っていかに力を作用させ、仕事を生むか。そこにこそ、技術の価値があると思っています。

──何かに活かして初めて技術の価値が生まれるということですね。そのことを研修ではどう伝えていますか?

橘:私の場合は、たとえばコードの書き方だけでなく、具体的に業務効率化にどう活かせるかまで説明するように心がけていますね。シススク研修では、最後にチームでものづくりをする演習があるのですが、課題は「研修で学んだ技術を使って便利なものをつくってください」というざっくりしたものです。

──まさに自分たちで技術の価値を生み出していく課題ですね。

橘:そうですね。みんなおもしろいものをつくるんですよ。たとえば、私たちの代であったのが、画像認識を使った不審者撃退センサー。インターホンを押して、ブラックリストに名前がある人の顔だと認識したら、スプレーをかけるというものです(笑)。あとはコロナ禍で筋トレがブームだったので、加速度センサーを使ったスクワットのオンライン対決ソフトを開発していたチームもありました。

則武:僕らの代では、起きられないとエアコンの温度を1度ずつ下げていく目覚まし機能なんてものもありました。ちょっと大喜利みたいですよね(笑)。

──実際にものをつくれるのがすごいですよね。

橘:意外とつくれてしまうんですよね。ベースとなる技術は研修で一通り学んでいるし、チームには各領域に長けた人がいるし、どうしてもわからないことは講師の先輩社員に聞くこともできますから。

則武:あとはシススク研修の内容が、Web系だけでなく、デバイスやセンサーを使った組み込み系までカバーしていることも大きいと思いますね。これはメーカーならではでしょう。たとえばセンサー一つとっても、加速度・照度・測距・脈波などいろいろな種類があり、できることが広がります。

グッドデザイン賞も受賞した研究開発施設「SKT棟」。様々な分野の技術者が集まりシナジーを生んでいる。

──なるほど。実際にものをつくると、技術の価値を実感できそうです。最後に、今後シススク研修を受講する未来の新入社員の方に向けたメッセージをお願いします。

橘:自分の得意分野に限定せず学べるので、幅広い分野に興味を持ってほしいなと思います。そもそも知らなければ興味すら湧かないですよね。学ぶことで向き不向きや興味の方向性もわかると思います。本当にいい研修だと思いますよ。

則武:僕自身、最初は知らない分野ばかりでシススク研修に対して「辛い」と思っていたほう。その体験からもいえますが、未経験の分野でも案外なんとかなるものです。ぜひハードルを感じず、何でもトライしてみてほしいですね。今後は事前の環境構築のフォローなど、入り口でハードルを感じないよう工夫もより充実させていきたいです。受講する方はぜひ楽しみにしていてください。

─インタビューを終えて─
新しいことを学ぶときは一定の辛さもありますが、同時に楽しさもあり、進んだ先には技術者として、そして企業人としての大きな成長が待っているのだろうと思いました。シススク研修で技術の価値を知った新入社員のみなさんが、今後どんな形で技術の価値を生んでいくのか楽しみです。

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